2016年2月9日火曜日

日本変人列伝六 葛西善蔵

青森出身の小説家。「二軒長屋の西側の、壁は落ち障子は破れた二間きりの家の、四畳半の茶呑台の前に坐って、髪の伸びたロイド眼鏡の葛西善蔵氏は、綿のはみ出たどてらを着て、前かがみにごほんごほんと咳ながら…」と嘉村礒多が描いたように、彼もまた貧困と病気に攻め立てられながらの、凄まじい創作活動のひとだった。青森に妻と三人の子供を置いて東京へ遁走、東京でも別の女性に二人の子供を産ませている。
いよいよ死の前日、枕頭に集まった人たちに酒をふるまい、自らも吸飲みで酒を飲み、不明瞭ながら在世中の謝意を述べたという。まるで絵に描いたような、凄絶無惨な破綻生活を地で行った作家で、加えて酒乱、肺病、奇行と、負の要素が満艦飾。こうした生活の実体験から生まれた「私小説」には、妙な毒味があって、惹きつけられる。「文芸の前には自分は勿論、自分に附属した何物をも犠牲にしたい」とは葛西の決意のことばだが、彼は本当にそれを実行した。41歳没。代表作に「哀しき父」「子をつれて」「酔狂者の独白」など。



0207 zenzo kasai




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