2016年3月2日水曜日

日本変人列伝八 小林一茶

芸術家というのは作品をもって評価されるべきで、現実の人物像というものは、多少の歪み(変人ぶり)があっても作品の彩りとして美化されてしまうところがある。エピソードに関する伝聞というのはあやふやなものだし、歴史の風化というのもある。しかし、一茶の場合、自らが記録として書き残したものがあるので、そこから人となりが割合知れてくる。
俳句で食っていくための世俗的な世渡りの苦労、長者や権威への追従、弟と義母を相手取った十年に及ぶ遺産相続争いの泥々、五十を超えてからの三度の婚姻と荒淫の日々など、なんとも人間臭いというのか、およそ離俗とは真逆の濃厚な体臭が漂っている。ままならない世の中にあって、時に愁嘆、時に自嘲、くすぶる欲望を抱えながら、生涯二万数千の句。月よ花よのきれいごとではない、身悶えのリアルが一茶の創作の真髄だった。1828年没、64歳。



0226 a man

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