2016年9月28日水曜日

匂いの記憶

街なかを歩いていて、ふと漂ってきた匂いに昔の記憶が鮮やかに蘇ることがある。記憶を呼び覚ます匂いには色々あって、油や煙、ドブ、公衆便所といった悪臭の類いから、香水、食べ物、飲料、花などのよい香り、印刷屋、かばん屋、青果店などにある商売特有の業種臭もある。最近は感じなくなったが、役所や郵便局には特有の匂いがあったし、家電店には機械臭が漂っていた。職員室の匂い、体育倉庫の匂い、講堂の匂い、みんなそれぞれ違っていた。この記憶の再生がまた独特で、昔のある瞬間の、その時の映像や感情が、ナマナマしく飛び出してくる。どうしてこんなことを憶えていたのか、と不思議に感じるような片々たる記憶だ。
匂いの記憶は他の感覚器官とは情報処理の回路が違い、脳の記憶庫に直接焼きこむ仕組みになっているそうだ。思い出そうとして思い出すという意識的な記憶再生ではなく、瞬間的に蘇る感覚はこのあたりに理由がありそうだ。

あちこちの庭から金木犀の香りが漂い始めた。



0916 woman

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